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ピッチャーのためのインナートレーニング(前編)

こんにちは、最近ようやく暑さにも慣れてきたオグロです!


現在、全国高校野球選手権大会(いわゆる甲子園)の真っ最中です。

今年も熱い戦いが繰り広げられていますね。


近年「投球過多」が野球界のひとつの大きなテーマとしてあげられるようになりました。球児たちの未来の可能性を狭めることがあってはならないというのが世の大多数の意見かと思われますが、私も同感です。ただし単純に投球数を制限すれば解決かと言えばそうではないように感じます。


我々としては「怪我をしない中でいかにパフォーマンスをあげられるか」という理想論かもしれませんが、指導者は常にこの永遠のテーマを突き詰めていく必要があります。


インナートレーニングの必要性

投球パフォーマンスを高める&怪我を減らすという2つの要素に共通するのが「インナートレーニング」です。はじめに断っておくと、これだけで全てが解決するというわけではありません。しかしながら解決の一要素に十分なり得るものであるということをご理解をいただければと思います。


肩のインナーマッスルの言われる筋肉群は全部4つ存在します。

これらが上腕骨の上端にある上腕骨頭を包み込むように配置されていることで肩関節の安定性を増します。


肩が不安定だと投球時に周辺の筋肉や靭帯を傷つける危険性が上がってしまいます。また潜在的に肩が痛くなるのを恐れて肩が速く振れないよう脳がブレーキをかけてしまうようにもなってしまい、結果としてパフォーマンスの低下を招いてしまうのです。


肩のインナーマッスルは肩を安定させるだけでなく肩を内側や外側に回旋させる作用も有しており、回旋筋腱板(ローテーターカフ)とも言われたりします。そのため肩のインナーマッスルのトレーニングでは肩の回旋動作を主に用いることが多いです。


インナートレーニングのバリエーション

肩のインナーマッスルトレーニングは大きく3つの要素を変化させてトレーニング強度を変化させていきます。これが整理できるとトレーニングの幅が格段に広がります。


①負荷

どのツールで負荷をかけていくかという要素です。用いるツールによって特性があるので、どんな要素を鍛えたいのか、あるいはどんな練習環境にあるのかによって使い分けられるといいですね。下にいくつか例を挙げます。


・ダンベル(ペットボトル):

負荷が一定で変化がない。重力方向に沿って負荷がかかるためトレーニング姿勢に配慮が必要。実際の投球と同じ負荷のかかり方であるため脳の反応としては適応しやすい。また比較的用意しやすいツールであるためどんな環境でもトレーニングができる。


・チューブ:

負荷が一定ではなく、引っ張れば引っ張るほど負荷が強くなる。筋出力のコントロールを鍛えるには向いている。椅子の足やフェンスなどにくくりつけられるため重力方向に関係なくどんな姿勢でも負荷をかけることができる。基本的には直線的な負荷になるので、回旋動作中にエラーが見られやすい。軽量で持ち運びが簡単なのでチームや個人で所持していると便利。


・サンドボール:

中に砂が詰まったボール。野球のボールに類似した大きさのため扱いやすく、投球に模した動作でのトレーニングが可能。球体であるため重りとしてだけでなく投げる、転がすなどの用途としても使えるためトレーニングのバリエーションも増える。


②肩の位置

いわゆる肩関節(専門的には肩甲上腕関節)の関節角度によって負担のかかる部位が変わってきます。怪我のリスクを最小限にするのか、あるいは投球動作に近いトレーニング姿勢の方が実際に活かされやすいという特異性の原理を考慮するのかなどトレーニングの目的によっても調整すべきところです。


・1stポジション(ファーストポジション)

専門的に言えば肩関節は「下垂位」という姿勢になります。トレーニングをする場合は”小さい前習え”というのを小学校でやったことがあるでしょうか?そんな姿勢に似ていますね。この肢位で肩関節の外旋運動をすると棘上筋と棘下筋の上部線維が主に働くと言われています。


・2ndポジション(セカンドポジション)

こちらは「肩関節90度外転位」という姿勢になります。トレーニングをする場合には力こぶを出す時の姿勢に似ていますね。この肢位では棘下筋に加えインナーではないですが僧帽筋下部線維の働きも大切になります。


・3rdポジション(サードポジション)

こちらは「肩関節90度屈曲位」という姿勢になります。2ndポジションから肘の高さを保ったまま正面に持ってくる(肩の水平屈曲という動きです)とこの姿勢になります。この肢位では小円筋と棘下筋の下部線維が主に働くと言われています。


③全身の姿勢

全身の姿勢が変化することで重力のかかり方が変わってきます。そのため同じ肩の位置でも鍛えられる部位が変わってくるのです。また、肩はそれ単体で活動することはほぼありません。下半身や体幹が安定して初めて正常な活動ができます。そのため肩以外の姿勢がどのようなものであるのかというのは必ず考慮が必要となります。代表的な姿勢を下に挙げます。


・仰向け:

1stポジションと2ndポジションでは 内旋動作に重力負荷をかけられます。3rdポジションは回旋方向に重力負荷がかからない状態です。


・うつ伏せ:

1stポジションと2ndポジションでは外旋動作に重力負荷をかけられます。3rdポジションは回旋方向に重力負荷がかからない状態です。


・横向き:

1stポジションと3rdポジションでは外旋動作に重力負荷をかけられます。2ndポジションは回旋方向に重力負荷がかからない状態です。


・四つ這い:

うつ伏せと同じ特徴を持っていますが、地面との接地面積がより小さくなるので体幹が不安定になります。そのため体幹の安定性も同時に鍛えることができます。


・座位:

2ndポジションと3rdポジションでは外旋方向に重力負荷をかけられます。1stポジションは回旋方向に重力負荷がかからない状態です。上記姿勢より投球に近い姿勢になっています。


これら3つの要素を組み合わせながらトレーニングを考えると数多くの種目を作り出すことができます。あとはそれぞれの選手の苦手を補えるかどうかで取捨選択していきます。


さらにピッチャーのための肩のトレーニングでは肩甲骨周囲のトレーニングも欠かせません。こちらも盛りだくさんなのでまた改めてお話させていただきます。


今回はこれで終わりにします。次回は実際のトレーニングをご紹介したいと思います!!

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